【本】ノモンハンの夏

ノモンハンの夏 (文春文庫)

ノモンハンの夏 (文春文庫)

司馬遼太郎さんが晩年、執筆しようとして情報を集めたにもかかわらず断念したという、ノモンハン事件。半藤氏も本の中でたびたび書いているように、この題材を扱っているだけで腹立たしくなったのかもしれない。そして、戦力の差は明らかで、勝ち目はないのに、それを認めようとせず、ただ国境を守るという勝手な「節義」のためだけに尊い命を投入し続けた。戦死・自決・病死してしまった人たちのことを無念に、申し訳なく思ったのだろう。

最後の過去から人は学ぶことができないのか、という皮肉の問いかけは、作者の最大の悔しさを表しているのかもしれない。
この事件をきちんと検証し、教訓を得、責任を明確にしていれば、その後数百万に及ぶ犠牲者を出した太平洋戦争へと進むことはなかったのかもしれない。

そのような意味で、ノモンハン事件は、「事件」でしかないのではなく、戦争であり、すでに太平洋戦争の前哨戦的な位置づけで解釈したほうがよいのかもしれない。